タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
白く汚れたスエルツ王子の顔が、ヒクヒクと反応した。


「王子! あたしよ! 分かる!?」

「・・・・・・アザレア姫?」

「ミアンよ!」


王子は呻きながら体を起こし、周囲を見回した。


そして膨大なガレキの山を目にして、悲壮な表情になる。


「そんな・・・これが、カメリア城・・・・?」


呆然とつぶやく王子の近くで、キラリと何かが光った。


「・・・・・・?」


気付いた王子が手を伸ばし、ガレキのすき間からそれを引っ張り出す。

それは・・・・・・


セルディオ王子の、金のペンダントだった。


スエルツ王子は、驚いた表情でペンダントをじっと見つめている。


やがてその手が震えだし・・・王子は、すすり泣き始めた。


両目からハラハラと涙が、幾粒もこぼれ落ちる。


「セルディオ・・・・・・」


王子は、ペンダントに向かって涙声で話しかけた。


まるでそのペンダントが、弟本人であるかのように。


「ねぇ、セルディオ。そんなに・・・王になりたかったの?」


悲しげに王子は語り掛ける。


ペンダントに、いや、弟に。


もう・・・なんの答えも返してくれない弟に。


「なら・・・そう言ってくれればよかったんだ」


ポタポタと落ちる涙がペンダントを濡らす。


王子は顔をクシャクシャにして、むせび泣いた。

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