タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
子どものように泣いていたオルマさんの嗚咽が、ピタリと止まった。


そして表情が凍り付く。


あたしもスエルツ王子も絶句してしまった。


信じられない思いで、あたしは瀕死の王を凝視する。


「ち、父上!?」


「この、女は・・・我がカメリアの敵だぞ・・・殺・・・せぇ・・・」


「ち・・・・・・」


「王になりたければ・・・殺せ。殺して・・・秘宝を、奪え」


・・・・・・・・・・・・!


オルマさんの顔から、みるみる血の気が引いていく。


あたしも、あまりのことに気が遠くなりかけた。


なに・・・・・・考えてんのよあんたは!


それじゃまるで、20年前と何ひとつ変わらないじゃないの!


同じことを繰り返すつもりなの!?


・・・なにも言うな! もうそれ以上、オルマさんを傷つけないで!


王は倒れたまま、ギョロリと目玉を動かしオルマさんを見上げた。


「毒婦め・・・我が息子の手にかかり、滅びるがよいわ・・・」


最期の力を振り絞り、王は宣言する。


「死に絶えよマスコール! 勝つのは・・・余だ!」


――シーーーーーン・・・・・・


再び、沈黙が訪れる。

王の体から力が抜け、地に伏した。


そしてもう、動かなかった。


この男は・・・・・・


絶命していた。


血まみれの姿で、土気色の・・・誇らしげな顔で。

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