タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「ク・・・・・・」

沈黙を破る音。


顔色を変えたあたしと王子が、恐る恐るオルマさんを見る。


「ク・・・クク・・・ク・・・」

「オ、オルマ、さ・・・」

「ククク・・・ふ・・・ははは・・・」


忍び笑いのような声が徐々に高くなる。


やがてそれは、空気をギリギリ震わすほどの嬌声となった。


「はははは! あーははははは!!」


身を反り返し、頭を振り回す。


彼女の長い結い髪がほどけて、バサバサと乱れ舞った。


天を仰ぐ両目はギラギラ光り、歯をむき出しにして、怒鳴りつけるように笑い続ける姿。


あたしと王子は、なすすべもなく、その狂気のさまを見守るしかない。


そしてピタリと、笑い声が止まり・・・


彼女の表情は、一変する。


例えようもない凄絶な顔で、高く掲げる竜神王の目を見つめた。


「オルマ・・・・・・」

「オルマさん・・・・・・」


あたしと王子は、ゆっくりと両手を彼女に向かって差し出した。


そしてジリジリと、ゆっくり、ゆっくりと間を詰める。


「オルマ、どうか落ち着いて・・・」

「オルマさん、こっちへ・・・」


脈打つ動悸は早鐘のよう。自分の鼓動が恐ろしいほど大きく聞こえる。


隣の王子がゴクリとノドを鳴らした。


浅く呼吸し、瞬きもせず、少しずつオルマさんに近づく。

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