タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
ガレキの向こうに、鮮やかなドレスの色が見えた。


アザレア姫が前のめりになって懸命に走っている。


その背後に、一体のゾンビが唸り声を上げながら迫っていた。


「姫ーーーーー!」


王子の叫び声に気付いた姫が、こちらに向かって必死の形相で逃げてくる。


「スエルツ王子ーーー!!」


王子が走りながら剣を抜こうとして腰に手を当て、そこに何も無い事に気が付いた。


城の崩壊に巻き込まれた時に、失くしてしまったんだ。


それでも王子は怯むことなく突っ走る。


姫の体が突然、バランスを崩した。


あっと思った途端、ズザッと転んでしまう。


その間にゾンビは姫に追いつき、襲い掛かろうとした。


「うわああぁぁーーー!!」


奇声を上げた王子が、思い切りゾンビの体に飛びかかっていった。


ゴロゴロともつれるように地面に転がり込む。


あたしは急いで姫に駆け寄り、助け起こした。


「姫、大丈夫!? ケガはない!?」

「王子が! スエルツ王子が!」


王子がゾンビに組み敷かれ、襲われている。


ノドに今にも食いつかれそうになり、必死に下からゾンビの顔を押し上げていた。


「王子ーーー!!」

あたしは無我夢中で駆け寄った。


この腐敗物! 王子から離れろーー!!

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