タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「オルマ! オルマーー!!」

泣き叫ぶ姫。


その声に反応するように、オルマさんの視線が姫へと動いた。


「ひ・・・め・・・?」

「オルマ! わたくしはここです!」

「ひ・・・・・・」


オルマさんの指の先が、ピクピクと動いた。


姫はその手を強く握りしめ、自分の頬に押し当てる。


「オルマ! わたくしが分かりますか!?」


真っ赤な血にまみれながら、オルマさんは姫の姿を見ている。


ゼイゼイと喘ぐように大きく口を開けて、何かを伝えようとしていた。


でも・・・もう、ほとんど声が出なかった。


オルマさんの紫色の唇が、悲しげにわななく。


目の端からポロポロと涙がこぼれ落ちた。


必死に力を振り絞り、彼女は姫に言葉を伝えようともがいている。


「ゆ・・・・・・」

「オルマ!!」

「ひめ・・・ゆ、ゆる、し・・・」


ようようそこまで絞り出した言葉。


なのにオルマさんは途中で飲み込んでしまった。


そして顔を歪めて、苦しそうにポロポロと泣き続ける。


『許して』


きっとそのひと言を、彼女は死ぬ前に姫に伝えたいんだろう。

でも・・・・・・。


『許して』などと・・・・・・。

とても姫に、許しを請うことなどできないのだろう・・・・・・。

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