タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「気を付けろよ。この辺ヘビ出るぞ。噛まれるぞ」


「なによ! 頭の上の安全地帯でノンビリしてないで、少しは役に立ってよね!」


白い毛の一部しか見えないけど、すまし声のブランを見上げてムッと睨んでやった。


まったくグータラな夫ね! おまけにけっこう重いし!


・・・別に夫って認めたわけじゃないけど!


ハアハア息を切らし、何度も汗をぬぐって立ち止まり、草をかき分け前へ進む。


斜面を踏みしめ踏みしめ登って、もう疲労が限界に達しかけた時・・・


目の前に、ドーンと垂直にそびえ立つ、高~~い崖が見えてきた。


おおぉぉ! やった! 着いたあぁーー!!


ドサリと地面に両ヒザをつけ、へたり込む。も・・・も・・・限界ーー。


ブランがヒラッと頭から降りて、崖を見上げた。


「ミアン、ほら見てみろ。あそこが鳥の巣穴だ」


あ? なに、どこが巣穴だって?


見上げた視線の先、高い崖のはるか上の方の岩肌に、たくさんの穴が開いている。


・・・ひえぇ!? まさか、あそこまで行けと!? この崖をよじ登ってえ!?


「あたし無理! 人間には絶対に不可能です!」

「行ける。大丈夫だ」


自信たっぷりに、無責任な保証しないでよ! あたしはヤモリじゃないんだから!


おまけにあたしは手みやげのお魚、かついでるんだからね!? 


両手がつかえない分、あんたよりも条件が不利なのよ!


・・・っていうか、そもそもブランは登れるわけ? この垂直に切り立った崖を。

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