タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「うああーっ!!」

ギシギシと骨と筋肉が軋むのが分かる。圧迫感で呼吸ができない!


この調子で絞められ続けたら、あたしの体がペシャンコになってしまうのなんか、あっという間だ。


こんのぉぉ、ヘビのくせして、なに人間の女の子を抱きしめてんのよ!


お前ひょっとしてオスか!?


――ギリギリギリッ!


「ぐうっ!?」

ますます締め付けが強くなってきた。目を剥き、歯を食いしばる。


もう、体のサイズが変形してしまいそう! 


痛い! 痛い! 苦しいー!!


大蛇の胴体をベチベチと平手で殴りながら、あたしは天を仰いで悲鳴を上げた。


もう耐えられない! ダメーーー!!


「ガアアァァーッ!」


雷のような咆哮が響き、白い大きな影が颯爽と駆け寄ってきた。


「勝手に触るな! それはオレの嫁だ!」


ブランの声のそれは、真っ白な大虎だった。


伝説の魔獣のような巨大な二本の牙を剥き、大蛇の体に容赦なく突き立てる。


あたしを絞めつけていた胴の収縮が、ビクッと震え、一気に緩んで放れた。


大蛇から逃れ、ヨロヨロしながら、あたしは数歩すすんで倒れこんでしまった。


ブランは怒り狂った唸り声をあげ、巨大な牙と鋭い爪で攻撃していた。


大蛇はのた打ち回り、なんとか逃れようとあがいている。


暴れる大蛇の尾が、ブランの首に巻き付く。そして全力で締め付け始めたのが見ていて分かった。


さっきみたいな力で首を絞められたら・・・!


ブランの表情が苦しげに歪む。それでも決して牙も爪も放さない。


あたしはブランに向かって大声で叫んだ。


「ブランお願い、負けないでー!!」


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