タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
あたしの叫びに、ブランの目がカッ!っと見開かれた。


そしてあたしの背後で『ボンッ』という破裂音が響く。


あの音は、変化魔法の・・・!


ふり向くあたしの目に、地に落ちている、薄煙に包まれた一本の槍が見えた。


1メートルほどの木製の柄の先に、細く鋭いシンプルな刃が銀色に光っている。


さっきの枝! 魔法で槍に変化させたんだ!


大蛇に締め付けられているブランの険しい目が、あたしを見ている。


その目が訴えている事を、あたしは瞬時に汲み取った。


わかった! ブラン待ってて!


落ちている槍を拾い上げ、あたしは走った。


さっき大蛇が鳥たちを襲っていた、壁際の段差になっている所を目指して。


地面から2メートル半ほど高さのあるその場所。


岩壁の凹凸に手足をかけ、へばりつく様にして、夢中になってよじ登る。


そこに止まっていた鳥たちが、一斉にバサバサと飛び立って逃げ出した。


・・・邪魔! みんなちょっとそこどいて!


あたしは段差部分に立ち上がり、槍を持って端に立った。


ちょうど真下に、ブランが大蛇の体を引きずってきた。


ブランの首を絞めつけることに集中しているせいか、大蛇の胴体は暴れずに静止している。


・・・いまだ!


「うあああぁぁぁーーっ!!」


気合いもろとも、あたしは槍を振り上げながら大蛇目掛けて飛び降りた。


――ズンッ!!


地面から両足へ伝わる衝撃。槍から伝わる鈍い感触。


槍の穂先は、深々と大蛇の胴に突き刺さった。


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