タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
パーティー会場は、まさに別世界だった。


贅を凝らした豪華な衣装や宝石を身に着けた人々で、室内は溢れかえっている。


グラス片手に談笑する貴族たち。


楽団が奏でる華やかな音楽に身をゆだね、軽やかに踊る男女。


それぞれから漂う濃厚な香水の匂いが混じり合い、会場を彩る花の香りを消し去る。


こんな世界もあるのね。現実に。


あたしにとっては夢のような世界が、この人たちにとっては、ごく当たり前の日常生活だなんて。


つくづく世の中の不思議を思っていると、ヒソヒソ・・・と、話し声が耳に入ってきた。


「どちらのお方かしら?」


「あまりお目にかかった事がございませんわね?」


「お若いご夫妻ですこと」


・・・ひょっとしてあたしたちの事をうわさしてる?


「シーロッタ・ヌゥーキー男爵ご夫妻ですって」


あ、やっぱり。


うわー、き、緊張する。

年季の入った生粋の奴隷少女が、はたしてうまく貴族たちをごまかせるかどうか。


ブランなんて人間ですらないわけだし。

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