タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
上流階級の作法なんて全然知らないから、なにがきっかけでバレるか分からない。


指一本動かすのも怖い。歩くのも怖い。


わーん、もう動けない! か、固まっちゃったよおぉ!


「なあミアン。食いモンないのかな? 食いモン」


「・・・・・・・・・・・・」


「オレ、ハラが減ったな。人間に変化してると本当に消耗するんだよ」


・・・このお気楽さが、タヌキの長所でもあり欠点でもあり。


「みんなが飲んでる色水みたいなヤツ、あれってハラの足しになるのか?」


「ならないわよっ。もう少し辛抱してよっ」


「ちぇっ。まあ、こんな事もあろうかと用意はしてきたけどな」


コソコソ声であたしと会話していたブランが、上着の懐に手を突っ込んだ。


そしておもむろに取り出した物を見て、あたしはギョッとする。


で・・・・・・

出たーー! ネズミーーー!!


しかもそれ、ピッチピチ元気に生きてるしー!!


あーん、とその場で大口開いてネズミを食べようとするブランを見て、さらにギョギョッとする。


ちょっとなに考えてんのよあんた!!


―― バッチーーーンッ!!


あたしは思い切り、ブランの首根っこ部分を引っぱたいた。


思わず前のめりになるブランの手から、ネズミが落ちて逃げていく。


「あら、あなた! 首筋にホコリが・・・!」


ビシバシビシッ!


「おほほ。嫌ですわぁ。ほんっとにもおぉ・・・!!」


バシバシッ・・・・・・ドコォッ!

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