タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
「それはそうなんだけど、でも、あたし社交ダンスなんて踊れないよ!」


「適当にマネして踊ればいいだろ?」


「そんなわけないでしょ? ちゃんと決められたステップがあって・・・」


「めんどうくさいなあ。いいって、気にすんなよ」


そう言うとブランは、あたしの手を取る。


そして皆が踊っている場所にグイグイと引っ張って行った。


ちょ、ちょっとブランってば! そりゃマズイってば!


ブランはお構いなしに、ホールのど真ん中に堂々と立つ。


そして見よう見まねで、あたしを振り回しながら適当~に踊り始めてしまった。


わっ、わっ! うわわわっ!?


引っ張られ、押され、クルッと回転させられる。


ひぃぃ、どうしよう! ヨロヨロでメチャクチャ! は、恥ずかしい~!!


「まあ、初めて見るステップ!」


「きっと異国で流行しているステップなんですわ」


「そうですわね。男爵さまの、あの軽やかな動き!」


「ダンスもお上手なのですわねぇ!」


・・・・・・なんというか。人間、顔が良ければ何でも許されるもんなのね。


人間じゃなくてタヌキだけど。


ブランは上機嫌で、あたしを見つめながら踊っている。


華やかな音楽に乗って、夢の世界がくるくると回転する。


お酒と香水の香り。煌びやかな空気。

そして・・・・・・


目の前の、素敵なブラン・・・。


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