タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
うっとりするほどに美しい少年が、あたしを見て微笑んでいる。


触れ合う手。交わす視線。


楽しい音楽に身を任せ、体を自由に動かし、心まで軽やかになる。


どんどん周囲の視線が気にならなくなってきた。


周りの貴族たちも、今のこの状況も、あたしの頭から消え去っていく。


あたしの目に映るのも、感じるのも、ブランだけ。


あなただけよ・・・ブラン・・・。


そっと、ブランの胸に熱く火照る頬を寄せた。


吐く息の熱さも心地良く、あたしはうっとり瞳を閉じる。


キュッと切ない痛みが走る胸の中で、高鳴る鼓動。


「ねぇ・・・ブラン」

「なんだ?」

「ブランは、本当に良かったの? あたしと結婚して」


後悔はしていないの?


可愛いメスのタヌキと結婚して、可愛い赤ちゃんに恵まれて、普通に、幸せに生きていく。


そんな生活と引き換えにしてまで、あたしとの結婚を選ぶの?


「そんなの当然だろう?」


――ドキンッ! 


心臓が大きく鳴って、あたしの頬はますます赤く染まった。


ブランのその答えが嬉しくて。


ただもう、素直に嬉しすぎて、泣きそうになる。


ああ・・・全てを投げ出して、何もかもブランに委ねてしまいそう。


「当然? ・・・どうして?」


『オレの嫁は、ミアンだけだからだ』


・・・きっと、そんな答えが返って・・・


「オレは白騎士だ。人間の嫁をもらう事なんか、最初から決められていた事だからな」


・・・・・・!


閉じていたあたしの目が、大きく開かれた。

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