不良君とオカルトさん。

黒い女

「駄目だ血圧下がってる。輸血至急用意しといて。」

「聞こえますかー！？…さん！聞こえますかー！？」

「はい、乗せます。イチ、ニの、さん！」

「耳から出血あるね。ＣＴ連れてって。」


ーーー…俺に何かが起きている。
酷く頭が痛い。身体に力が入らない。

何で周りが明るいんだ？さっきまで真っ暗だったじゃねえか。滲んだ明かりが眩しい…。消してくれよ。

その時、全てが滲んでぼやけた世界の中で俺は『それ』を見た。

それは白く滲んだ光の中で、ぽっかりと空いた穴のように鮮やかで、不気味だった。

あれは、女だ。

影のように見えるが、それそのものが真っ黒で、曇りの夜のように濁った黒色だ。まてよ、何で俺はそれが女だって分かるんだ。




ーーー怖い。

本能的にそう思った。恐怖が俺の身体を縛り付ける。

『それ』が近づいてくる。壊れたマリオネットみたいに、ふらふらと。

来るな来るな来るな来るな来るな
来るな来るな来るな来るな来るな


『それ』が、俺に囁いた。ざらざらとしたノイズのような声が頭に響いた。




ーーーマた、来るワね。