ガーデンテラス703号
In his car
「今日の夜、空いてない?午後に営業であゆかちゃんの会社の近くまで行くんだけど、仕事終わりに一緒に食事でもどう?」
森岡さんからそんなメールが届いたのは、合コンから一週間経った金曜日のお昼休みだった。
ランチに訪れていたパスタ屋さんで、片手にスマホ、片手にフォークを持ち上げたまま固まっていると、向かいに座っていた香織に前からスマホを奪われた。
「なになにー?わー、森岡さんからデートのお誘いじゃない」
香織が勝手に人のメールを読んで、ニヤニヤ笑う。
「食事に誘われただけ。デートとかそんなんじゃないよ」
香織に話す…というよりは、自分の心を落ち着かせるためにそう言って、彼女からスマホを奪い返す。
そうして香織に動揺をみせないように、平静を装ってスマホをカバンに押し込んだ。
「食事に誘われただけって……そういうのをデートって言うんじゃないの?」
香織がクスッと笑いながら首を傾げる。