ガーデンテラス703号
両手で取手を握りしめて勢いよくドアを閉める。
心臓がバクバク鳴って、掌が変な汗で湿る。
取手を握りしめたままそのドアの前で数秒硬直してから、私はちらりと視線を上げた。
703。
そのドアの左上に掲げられた小さなプレートには確かにそう書かれている。
シホから聞いている部屋番はそれで間違いないし、事前に渡されてる合鍵でドアは開錠した。
それに、数週間前にシホに連れられて下見に来てるんだから。
絶対に間違っているはずがない。
それなのに……
そのドアを開けると、見知らぬ男と目が合った。
それも、上半身裸の。
見たのは一瞬だったけど、背が高くて引き締まった身体つきをした、わりとイケメンだったと思う。