ガーデンテラス703号
On the sofa
森岡さんと一緒に食事をした翌日。
一日中部屋で悶々とした気持ちを抱えていた私は、夜になって香織に電話をかけてみた。
寝ている時間ではないと思うけど、それなりに遅い時間ではあったから、ベッドに三角座りをして、スマホを耳にあてて、ドキドキしながら香織が出るのを待つ。
「もしもし?」
友達に電話をかけるだけで、どうしてこんなにドキドキするのかわからないくらいだったけど、スマホの向こうから香織の声が聞こえてきたとき、やけにほっとした。
「うーん。つまり纏めると、森岡さんからのデートの誘いを受けたけど、いまいち乗り気になれないってことだよね?」
突然の電話の理由を訊ねられて、ぽつぽつと昨日のいきさつを話す。
最後まで話し終えると、香織が私にそう訊ねてきた。
「乗り気になれないっていうわけでは……」
はっきりとした答えを返せなくて、つい言葉を濁す。
昨日の夜、森岡さんに食事のお礼のメールをしようと思ったけれど、ホタルに邪魔されてまだ送信できていなかった。
そうして、結局そのままになっている。