ガーデンテラス703号


うっかりこういうことをしがちなのはシホだ。

明日の朝起きたら聞いてみないと。

そんなことを思いながら、紅茶を入れるためにキッチンのほうにゆっくりと歩く。

そのとき、部屋からはちょうど死角になっていたソファーに黒い人影が見えてぎょっとした。

誰もいないと思ったはずのリビングのソファーで、ホタルが小さな寝息をたてている。

仕事から帰ってきてそのままソファーに倒れこんでしまったのか、朝出かけるときに見た記憶のある服装のままで、肩掛けの小さなカバンも小脇に抱えたままでいる。


いつから寝てるんだろう……

ずっと部屋で起きていたけど、メッセージを作るのに夢中だったせいか、リビングからの物音に全く気付かなかった。

キッチンに向かうのをやめて、そっとソファーに近づいてみる。

起きていれば気配がわかるくらいには接近してみたけれど、ホタルは気付かず眠ったままだ。

上から見下ろしていると、背の高いホタルにはソファーで寝るのは窮屈そうだ。


朝起きたら、身体痛くなってそう。

そう思ったから、眠っているホタルの肩をトントンと叩いてみた。



< 209 / 393 >

この作品をシェア

pagetop