ガーデンテラス703号


「寝るなら、ちゃんとベッド行ったほうがいいよ。風邪ひくし」

何度か肩を叩きながら、控えめに声もかけてみる。

だけど、よっぽど疲れているのか、ホタルが目を覚ます気配はなかった。

それどころか、ますます気持ちよさそうに寝息をたてるばかり。

しばらくホタルの寝顔を見つめてから、ふと思い立って自分の部屋に戻る。

そうして余っているタオルケットを持ってくると、ホタルのそばでパサリと広げた。


ここで眠っているのを見つけてしまった以上、なんとなく見て見ぬ振りはできない。

もし風邪でもひかれたら、きっと罪悪感を感じてしまうに違いない。

だけど、広げたタオルケットをホタルにかけようとして、ちょっと躊躇った。

タオルケットをかけてあげるなら、小脇に抱えたままでいるカバンも取っておいてあげたほうがいいかな……

このまま朝まで寝てしまうとしたら、カバンを抱えたままっていうのは眠り辛いよね。


< 210 / 393 >

この作品をシェア

pagetop