ガーデンテラス703号


私は一旦タオルケットを置くと、ホタルのそばに寄って、彼が抱えたままでいるカバンにそっと触れた。

そのまま引っ張って抜き取ろうとしたら、紐がホタルの腕の下敷きになっていてうまく抜き取れない。

強く引き抜くと起こしてしまいそうだったから、ホタルの腕を持ち上げてとることにした。

息を潜めて、そーっとホタルの腕に触れる。

なるべく力を入れないように、その腕をつかんで持ち上げる。

そうして、ようやくホタルからカバンを取り上げたと思ったとき、いきなり身体が前に揺れた。

はっと気付いたときには、右の頬がホタルの胸にぴたりと張り付いていて、ソファーに寝転ぶ彼の上に覆い重なるように倒れこんでいた。


あれ、私、どうしてホタルの上に乗ってる……!?

手にはまだ、ホタルから引き離したカバンをつかんだまま。

自分からホタルの上に倒れこむほど、バランスを失うような行動をした記憶はない。


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