ガーデンテラス703号
「そんな言い方しなくたっていいでしょ。あんた、ほんとに冷たいよね。昔はもっと優しかったのに……」
「泣くな。面倒くせーな。昔っていつの話だよ」
「昔だよ。高校生くらい?基ちゃんに軽く告白まがいなことしたら、冗談だと思われて全く相手にされなくて。すごいショックで泣いてたら、キスして慰めてくれたじゃん」
「いつの話だよ……」
すすり泣くシホに、呆れた声で返すホタル。
いつもと変わらない態度を取っているホタルだけど、シホの昔話に私の胸は騒ついていた。
「あたし、ホタルには全然興味なかったけど、あのときあんなふうに慰めてくれたときはかなりドキドキしたよ」
「へぇ、そりゃよかったな。でも、結局お前は兄貴が好きなままだったよな」
「そうなんだけど」
すすり泣きながら、シホがクスリと笑う。
そうして身体を起こすと、まだ下敷きにしたままのホタルを引き起こして向かいあった。