ガーデンテラス703号


ソファーの上で互いに向き合うシホとホタルの距離は近い。

互いに見つめ合っているふたりは、今私が部屋の前で突っ立っていることに全く気付いていないみたいだった。


「ねぇ、ホタル。慰めてよ、あのときみたいに」

シホが、ホタルを見つめながら甘く誘うような声を出す。

大学のときから一緒にいたけれど、こんなシホの色っぽい声を聞くのは初めてだった。

何度も確かめたけど、たぶんシホはホタルに恋愛感情は持ってない。

今のシホに、どれだけの理性があるのかわからないけど、こんなふうにホタルを誘うのは、酔ってるのと基さんの結婚で混乱してるせいだ。


だけど、ホタルは……?

ドキドキしながら、シホに跨られている彼の横顔を見つめる。

ホタルはしばらくホタルを見つめ返したあと、小さくため息をついた。


「今さらそんなこと言われたって、知らねぇよ」

冷たくそう言い放ったホタルだけど、私にはそこに切なさが滲んでいるような気がした。


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