ガーデンテラス703号


なんとなく察してはいたけど、やっぱりホタルはシホが好きだったんだな。

そのことを知って嫉妬心が湧くわけではないけれど、少しだけ胸の奥が疼いた。


「受け入れないわけないじゃない。外見も中身も、ホタルの好みの女の子は私みたいなタイプじゃなくてあゆかだもん」

複雑な感情を抱いている私の横で、シホが自信たっぷりに断言する。


「どういうこと?」

「あゆかは覚えてないかもしれないけど、あんたとホタル、実は大学生のときに顔合わせたことあるんだよ」

「嘘」

女子の中では背が高い私よりもずっと長身で、あんなふうにひとを睨むみたいな目付きをしたひとだったら、忘れるわけがないと思うんだけど。

703号室で初めてホタルに会ったときの高圧感を思い出して眉を潜めていると、シホがビールのグラスをテーブルに置きながら笑った。


「あ、今、あんな目付き悪いやつに出会ってたら忘れるわけないって思ったでしょ?」

「そんなことは……」



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