ガーデンテラス703号





待ち合わせ場所は、夜景の見えるレストランがあるホテルのロビーだった。


シャンデリアのかかった高い天井。

上等そうなふわふわの絨毯に、高級そうな革張りのソファー。

香水のような花の匂いの漂う、セレブリティーな空間を行き交うのは、スーツやドレス姿の着飾った人たち。

完全に非日常な空間の中でホタルを待つ私は、自分がその場でひとりだけ浮いているようで気が気じゃなかった。

ソファーに座って待つのもなんだか気が引けて、ロビーの隅の柱に隠れてできるだけ目立たないようにする。

入り口のほうをチラチラと気にしながら柱の陰で待つけれど、待ち合わせの時間が過ぎてもホタルはやってこなかった。

スマホを取り出して、連絡しようか迷っていると、ホタルからメッセージが届いた。


『少し遅れる。レストラン予約してるから、先に入っといて』

遅れるんだ……

先に、って。


< 378 / 393 >

この作品をシェア

pagetop