ガーデンテラス703号



「強がってない?なんか、声震えてるよ?」

「そんなこと……」

「こんなとこで来ないやつのことなんか待ってないで、俺と一緒にメシでも食いに行かない?」

「いえ、私は……」

首を振って一歩後ずさったら、男がにこりと笑いながら近付いてきて私の手首をつかんだ。


「行こうよ。待ちくたびれて、お腹すいてるでしょ?」

「いえ、大丈夫です」

抵抗する私を、男が愉しげにグイッと引っ張る。

そばを行き過ぎる人の中には、私たちに訝しげな視線を向ける人もいるけど、ただそれだけで誰も助けてくれない。

どうしよう。

ホタル……


祈るようにきつく目を閉じたとき、男が引っ張るのと反対方向に肩が引き寄せられた。

手首を拘束していた男の手が解かれるのを感じて目を開けると、頭上から怒りを露わにした低い声が落ちてくる。


「悪いけど、ナンパなら他あたれよ。こいつはもう予約済み」


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