ガーデンテラス703号
Alarm
スマホのアラームの音が遠くから聞こえてくるような気がする。
起きなければ……と、意識の淵で考えながらも動けずにいると、すぐそばで低い声がした。
「あゆか、止めて。うるさい……」
アラームの音よりも、耳元で聞こえてきたその声に驚いて目が覚める。
枕元に置いたスマホのアラームを止めて身体を起こそうとすると、ホタルが私の腰に両腕を回して引き寄せてきた。
「ホタル、また勝手に人のベッドに入ってきてる……」
「だって、こっちの部屋のほうがリビングから近いし」
「近いとか、そういう問題じゃなくて……ここ、私の部屋なんだけど」
そう訴えかけたら、ホタルが私のことを無言で胸に抱き寄せてきた。
ほっぺたは押しつぶされて痛いけれど、鼻からいっぱいに吸い込んだホタルの香りにドキドキとする。
付き合うようになってから、ホタルはときどき、夜中に私の部屋のベッドに勝手に潜り込んでくるようになった。
深夜過ぎて店から帰ってきたときは特に疲れているらしく、朝目覚めたときに隣にホタルが眠っている確率が高い。