ガーデンテラス703号
「ホタル、私そろそろ起きるから」
「んー」
生返事を返したホタルが、布団の中で私をいっそう強く抱きしめて、唇が触れた場所に手当たり次第にちゅっとキスをする。
「ホタル、私、仕事……」
触れてくるホタルの唇がくすぐったい。ベッドから逃げ出そうとすると、ムクッと身体を起こしたホタルが、結構本気な力で私の背をシーツに押し付けてきた。
「まだ余裕あるだろ。いつも、2回目になるアラームで起きてるじゃん」
私の手首を押さえて顔を寄せてきたホタルが、訳知り顔でニヤリと笑う。
ホタルの言うとおり、1回目のアラームは「この時間に起きれたらなー」という、そもそも起きる気もないのに鳴らしている予備アラーム。それからさらに15分後に鳴るアラームが、本気で起きなければいけない時間を知らせてくれる。
そんな私の生活パターンが、しょっちゅう部屋に忍び込んでくるホタルにはバレている。
恨めしげに見上げると、ホタルがふっと笑って私の唇を塞いだ。