ガーデンテラス703号


散々笑ったあと、シホが空っぽになった彼女のグラスと私のグラスに新しいワインを注いだ。

ワインが入ったグラスを私に向かって持ち上げたシホが笑う。


「そんなわけで、あたしは元カレを吹っ切って新しい出会いを探します。あゆかも頑張ってね」

シホはそう言うと、彼女のグラスを私のグラスに軽くぶつけた。

チンとガラス同士が綺麗な音をたてて鳴る。

その音を聞いてから、シホはいたずらっぽく笑って囁いた。


「あゆかはもう出会ってるかもだけど」

「誰に?」

「ホタルじゃん」

シホの口から飛び出した目つきの悪い彼の名前に、思わず赤面する。


「だから、それはないってば!」

つい声を張り上げて否定すると、シホがにやにやと笑う。


「でも、あゆか顔赤いよ?」

「お酒飲んでるからだよ」

「そうかなぁ」

「そうだよ。シホが絶対ないって言うのと同レベルで私が彼とどうこうなるってことはないの!」



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