ガーデンテラス703号
Dining room
残業で少し帰宅が遅くなった私は、疲れたため息をつきながら玄関の鍵を開けた。
「ただいま」
一緒に住んでいるふたりからの返事を期待していたわけじゃない。
ただ何となくそうつぶやいてみると、それに答えるようにリビングのドアが勢いよく開いた。
「おかえり、あゆか」
開いたドアから、シホがテンションの高い声で飛び出してくる。
それと同時に、私の目の前で何かがバンッと弾けた。
「ひゃっ!」
その音に反射的に目を閉じ、思わず悲鳴をあげる。
「あゆか、ビビりすぎ!ただのクラッカーだから」
シホの笑い声に目を開けると、クラッカーから飛び出したカラフルな紙テープが私の頭の上に乗っかり、その一部が額から目のあたりに向かって垂れていた。
「こんな近くで撃たれたら誰だってビビるよ!危ないから!!」
額から垂れる紙テープを手で払いのけ、シホに抗議する。
シホは怒る私を見ても少しも悪びれることなくけらけらと笑っていた。