ガーデンテラス703号
「あの、ごめんなさい。戻ってくるのも遅くて……」
「別にいいけど。シホは酔い潰れてさっき寝た」
コンビニの袋から顔をあげたホタルが、つりあがった目で睨むように私を見る。
その眼差しの強さに、私は怯えて少し震えた。
別にいい、とは言ってるけど、内心不快に思われてるに違いない。
「そうなんだ。ごめんなさい……」
小さな声で謝罪したけれど、ちょうどそのときチンっという電子音と共にエレベーターのドアが開いて、私の声が掻き消される。
私、やっぱりホタルのこと苦手。
ため息をついていると、先にエレベーターに乗り込んだホタルがそのドアから上半身覗かせた。
「早くしろよ。ドア閉めるぞ」
怒ったような声で促されて、私は慌ててホタルについてエレベーターに乗り込んだ。
ホタルから距離をとってエレベーターに乗り込むと、それを見計らったように彼がドアを閉める。
部屋がある7階にエレベーターがたどり着くまでは5分もかからない。
でも、数秒でもホタルと密室に閉じ込められるのはとても居心地が悪かった。