ガーデンテラス703号
「いろいろ買ってきてもらったのに結局シホのやつ寝てるし、悪かったなと思って」
「え?あぁ、うん」
ホタルが買い出しが遅かったことを不快に感じてると思っていた私は、その言葉になんだか拍子抜けした。
そのうえ綺麗な顔で見上げられているから、なんとなくその場から動けなくなってしまう。
靴を半分脱ぎかけた状態で玄関に突っ立っていると、既に靴を脱ぎ終えたホタルが身体を起こした。
そうして、ぼんやり立っている私の横を大股で颯爽とすり抜けて部屋に入っていく。
コンビニの袋を持って私の横をすり抜けるとき、ホタルが私の耳元で何か思い出したように突然ふっと笑った。
「あ、でも。ナンパされてたし、そう悪くもなかったか」
からかうようなホタルの声に、カッと赤面する。
「別に、ナンパじゃないから。買い出し行ったコンビニで、ひさしぶりに元カレに再会しただけだし」
リビングに向かって歩いていくホタルの背中に向かって反論すると、ホタルが「ふぅん」と言いながら振り返って小首をかしげた。