子犬系男子の溺愛っぷり。
「黒瀬は、どう思ってんの?」

「あたし?」


分からない。

それが、分からないのよ。

恋をした事がないから、この"好き"が何なのか答えを見つけられない。


だから、困ってるの。

あたしに聞かないでよ、そんな事。


黙っていると、何かを察したのか、「まぁいいや」と言って席を立った。


「斎藤も、ようやく気づいたのかな」


入れ替わるようにして詩織があたしの席の前にやって来た。

斎藤の後ろ姿を眺めながら、詩織が呟いたその言葉。


「どういう意味?」

「自分の気持ちってやつに」


自分の気持ち……?

斎藤自身の気持ちって事?

何の、気持ちなの?


詩織は黙って笑っているだけで、続きを話そうなんて事は毛頭ないらしい。

頭の中に膨らんだ疑問を、なかった事のように消した。


「みんな恋してるんだね」

「みんなって?」
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