子犬系男子の溺愛っぷり。
背中に回っている腕は微かに震えていて、少しだけ熱い。


あたし、付き合ってるのにこんな事していいのかな…?


ダメだって頭では分かっているのに、斎藤を突き放す事なんて出来ないよ。


こんなに悲しそうな声を聞いたのは初めてだから尚更…。


「ごめんな。」


そうやって謝る斎藤が弱々しく見えて、あたしは何も言えない。


いつも強くて明るかったあの斎藤がこんなになるなんて…っ


「斎藤…ごめんね、…っ」

「謝るな。そんなに謝られたら俺が惨めになっちまうだろ?」


ーーー…あ、そっか…。


だけど、だけど……、

ごめんねの気持ちでいっぱいだよ。


あたしはどうすればいい?

どうしたら斎藤を傷つけない?


頭の中でいろいろ考えてみてもどうしたって傷つけない方法なんてなくて…


斎藤の気持ちに応える以外、斎藤を救うものは見つからない。

だけど、あたしには無理なの…


裕貴君がいるから…、

裕貴君しか好きになれないから。
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