子犬系男子の溺愛っぷり。
ごめんね、ごめんね…。

もう友達には戻れないかもしれないけど、あたしは斎藤の幸せを願ってるよ。


斎藤にはきっといい人がいるから、立ち止まらず前を向いて歩いてね…


「悪い。もう、大丈夫」

「…ん」


どれくらい抱きしめられてたんだろう。

どのくらい時間が過ぎたんだろう。


辺りを見れば日はほとんど沈んで薄暗くなり始めていた。


…まだ、斎藤に抱きしめられた間隔が少し残ってる。


あたし、最低だ…。

裕貴君がいるのに、斎藤を突き放す事なんて出来ないからって黙って抱きしめられて…


あたし、最低…っ


「黒瀬、そんな顔しないでくれ。
…迷惑をかけるつもりはなかったんだが、考えが甘かったのかな」

「…」


何て声をかければいいのかな。

あたしなんかが声をかけていいの?


「黒瀬にもあいつにも悪い事しちまったよな。…ごめんな。」


言葉が思いつかなくて、だけど斎藤が悪い訳でもなくて、あたしはただ頭を横に振るしか出来なくて。


「黒瀬、これは俺からの頼みなんだけど…。聞いてもらえるか分からないけど、もしよければ今後も俺と友達でいてほしいんだ」
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