子犬系男子の溺愛っぷり。
「…え、と」


この場の空気を作っている原因は分かっているからこそ、ここにいるのが苦しくなる。

何て声をかければいいんだろう…。


詩織にも迷惑かけてるし。

どうしたらいいんだろう…。


「…怜、とりあえず今日は夏目君と帰りな?そんでちゃんと話しておいた方がいいだろうし」

「うん。でも、詩織は…?」

「あたしはあいつを待っとくわ」


裕貴君がいるから斎藤の事をあえて名前で呼ばないで、"あいつ"と呼んだのだろうか?


気を使わせちゃってるよね。

それに、詩織が斎藤を待つなんて普段ではあり得ない。


…きっと、友達だからこそ詩織も放っておけないんだろう。


「…分かった。じゃあ、また明日…ね」

「うん、また明日!」


最後にはちゃんといつもみたいに"また明日"って言ってくれて、いつもみたいに笑顔を見せてくれた。


それだけで何か安心できた。

"また明日"って魔法の言葉みたい。


そう思ってバレないように微笑んだ。


あたしの隣には裕貴君が心配そうにチラチラと見ながら歩いている。


心配というか、不安って言葉もきっとあるんだと思う…。
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