memory
序章

「青い空が怖い」と彼女は言った。

聞いたときは何を言ってるのだろうと思った。でも今なら少し分かるような気がする。分からないけど。

俺は10年振りにあの街に帰る。

今は東京はそこそこの会社に就職でき、毎日が目まぐるしく過ぎている。

都会の空は狭い。空を見上げるなどまずない。

電車で1時間ちょっと。懐かしくも、随分と変わってしまった駅で降りる。

ふと空を見てみると、青々と果てしなく広がっていた。

空井陽子。彼女の名前のような空だと思った。

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