memory

それはともかく、鉛筆で下書きが終わったくらいのポスターだが、凄くリアルで躍動感がある。

「本当に上手だね。でもちょっと美化しすぎじゃない?俺こんなにイケメンじゃないんだけど…」

彼女は黙々と描き続ける。

「俺は字も絵もあんま得意じゃないから、役に立たなくてごめんね。」

ほとんどというか全て彼女しかやってなく、俺は見ているだけになってしまっている。

「私一人で出来るから、立花君もう帰っても良いよ。」

そうは言われたが、同じ委員として先に帰るのは、気が引けるし、何より彼女と一緒にいたい。

「いや、まだいるよ。描くところ見ていたい。嫌かな?」

「ご自由に。」

それだけ言って彼女は絵の具で色をつけ始める。

教室に差し込む夕日が真剣な彼女の横顔を照らしている。
< 10 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop