memory
それはともかく、鉛筆で下書きが終わったくらいのポスターだが、凄くリアルで躍動感がある。
「本当に上手だね。でもちょっと美化しすぎじゃない?俺こんなにイケメンじゃないんだけど…」
彼女は黙々と描き続ける。
「俺は字も絵もあんま得意じゃないから、役に立たなくてごめんね。」
ほとんどというか全て彼女しかやってなく、俺は見ているだけになってしまっている。
「私一人で出来るから、立花君もう帰っても良いよ。」
そうは言われたが、同じ委員として先に帰るのは、気が引けるし、何より彼女と一緒にいたい。
「いや、まだいるよ。描くところ見ていたい。嫌かな?」
「ご自由に。」
それだけ言って彼女は絵の具で色をつけ始める。
教室に差し込む夕日が真剣な彼女の横顔を照らしている。