memory
「…知りたい。」
俺がそう言うと彼女は目を伏せて、語りだした。
「私には、忘れるという能力がないの。」
「どう、いう、意味…?」
「そのままよ。私は全てのことを忘れることができないの。」
彼女の目にはうっすら涙が溜まっていた。
「6年前。両親が私の目の前で殺されてから、ずっと、何もかも色褪せることなく鮮明に記憶してるの。まるでさっき起きたかのように。あまりにもはっきりと。」
俺は言葉を失った。まさか彼女がそんなことをかかえているとは。
「・・・だから、誰とも関わらないようにしてたの?」
「そう。だって薄気味悪いでしょ。それに・・・。」
「それに?」
「怖いの。忘れることができないから、喧嘩したり、ひどいこと言われても、水に流すことが出来ないの。」
「それに、みんなが私のこといつか忘れても、私は決して忘れない。その事実にたえられなくて。」