memory
5章
日曜日。俺は彼女との待ち合わせで遊園地の前に来ていた。
彼女は言っていた。
「私ね、青い空が怖いの。」
「どういうこと?」
「両親が殺されたのが、良く晴れた、青々とした空の日だったの。私の9歳の誕生日だった。家族3人で遊園地に行ったの。そこで・・・。」
彼女は言葉を詰まらせた。
「だから、私は青い空が怖い。誕生日も嫌で仕方がない。記憶の渦が水のように私の中に流れこんでくるの。ひどく鮮明に。私はもう遊園地にも行けない。忘れられないってそういうことなの。」
「だったら、記憶を上塗りすればいいじゃん。遊園地に行くと辛い過去を思い出してしまうなら、それを楽しい記億に書き換えればいいじゃん。そうだよ!行こうよ遊園地。」
彼女は嫌がったが、説得すると、渋々承諾した。