memory
4月。桜が咲き、世の中がほんの少し浮かれる季節。
中2に上がりクラス替えの掲示板を見ると、立花澪の名前の上に空井陽子の名前があった。
一刻も早く教室に行きたかったが、色んな奴らに話し掛けられ少々時間がかかってしまった。
2年4組の教室に入ると、窓際の席に彼女が座っていた。
カバーのかかった文庫本を一人で読んでいて、彼女の周りにまるでフィルターがかかったように近寄るなと言っている感じがした。
俺は彼女の後ろの席に腰を下ろす。