memory

次の日は台風一過で快晴だった。

昨日の嵐が嘘みたいな青々とした空のした、登校すると、教室がなんだか、ざわついていた。

一体なんだろう。

そして、耳に入ってきた言葉を俺は信じられなかった。

「空井さんが、昨日車に轢かれて、亡くなったって。」

意味が分からなかった。

俺は茫然と一日を過ごした。

嘘だろう。一昨日まであんなに元気に絵を描いていたじゃないか。

彼女の色んな姿が頭の中にフラッシュバックしてきた。

初めて会った時の冷たい顏。
夕方偶然会ったときの困惑した顔。
俺に彼女の抱えていた秘密を打ち明けてくれたときの、決心したような顔。
遊園地での楽しそうな姿。
夏祭りの浴衣姿。
恥ずかしそうでも堂々と歌っていたカラオケでの姿。
いつも絵を描くときの真剣なまなざし。

俺はその晩、彼女の葬式に行けなかった。

彼女が死んだと受け止められなかったのだ。

どうしても、信じたくなかったんだ。
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