memory

「立花君へ


遺書というには少し違うけど、ラブレターというには少し気恥ずかしい、そんな手紙です。

私が忘れることが出来ないというのは、以前話しましたね。

そこでは言わなかったのですが、私の寿命はきっと他の人よりもうんと短いと考えられます。

通常の何倍ものスピードで脳を使っているからです。

もしかしたら、私は高校生になることすらできないかもしれません。

きっと私はあなたより早くこの世を去るでしょう。

だから、口では伝えられないことを言おうと思います。

結論からいうと、私はあなたのことが好きでした。

どんなに壁をつくっても、ずかずか私のなかに踏み込んできたあなたが好きでした。

私のこの力については誰にもいうつもりじゃありませんでした。

でもなぜかあなたには言いたくなった。

私は感謝しています。

あなたのおかげでいろんなことが体験できた。

あなたのおかげで笑うことができるようになった。

じつは、立花君のことを好きな女の子に、立花君から離れなさいと言われたことがありました。

でも、私は嫌と言った。

あなたと離れたくなかった。

いつまでもあなたと一緒にいたかった。

だけどそれはきっと無理です。

立花君ならきっとうまく私を忘れられる。

いままでありがとう。

空井陽子  」


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