抱きしめて。
交差
あの日から社長さんが頻繁に私のもとを訪れるようになった。
それとは逆に雪さんが一切私の部屋へ来なくなった。
「…髙宮さん?聞いているのか?」
「あ、えっと…ごめんなさい…」
「構わないよ疲れているのか?」
「…いつもと変わらないと思うんですが…」
変わらないと思う、本当に。
でも雪さんに抱きしめられて寝ていないせいか睡眠時間が格段に減ったきがするような…。
そんなことはお客さんの社長さんには言えないしな。
「前から気になっていたことがあるんだが…。僕には名前がある。ココにいるときくらいは大企業の社長であることを忘れたいんだ。差支えないなら悠誠とでもよんでくれないか?」