風の声が聞こえる
「……さま」
んー?
誰かが呼んでいる声に、重い瞼を開いた。声の主は、客室乗務員だった。
「お客様、ヨミ島に到着いたしました」
ああ。もう着いたんだ?うーんと大きく伸びをした。まわりを見ると、他の客は降りてしまったようで、私しかいなかった。
「気持ち良さそうにおやすみでしたので、起こすのが憚られました」
申し訳なさそうに、控えめな笑顔を見せる客室乗務員にこちらが申し訳なく思った。
「いいえ。ありがとうございました」
軽く会釈をし、機内に持ちこんでいたリュックを受け取ると、出入口へと向かった。
先ほどとは打って変わって、青い空と心地良い風が迎えてくれた。
東京の、まとわりつくような暑さとは違い、この島の暑さに不快感はなかった。