風の声が聞こえる
自転車の後ろに乗せてもらうなんて…高校生の頃を思い出す。初めて付き合った彼氏の自転車も、真っ赤だったな。



雨の日に、私に傘を貸してくれた彼は、どしゃ降りの中を、自転車で帰って行ったっけ…。それをきっかけに交際が始まって。1年ほど付き合ったけれど、突然、引っ越しを理由に別れを告げられた。


『本当の理由』は、わからないまま…。だから今でも、時々、思い出してしまうのだ。


「そこの図書館で止まりますね」


和賀さんは、小さな図書館に自転車を止めた。


「ここは写真家の男性が、本の管理をしてくれています。島の写真が飾られてありますので、旅の記念にご覧になって下さい」


ギギギ…と、重い木の扉を開いた。


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