風の声が聞こえる
「こんにちは。郵便です」


和賀さんが挨拶をして入ると、図書館の受付で、カメラのレンズを磨いている男性が、パッと顔をあげた。


「…良太くん?」


「遠野さんと、お知り合いですか?」


和賀さんは、私と良太くんの顔を交互に見た。最初は、首を傾げ、不思議そうに私を見つめていた良太くんであったが…。


「もしかして…いづみちゃん?」


思い出してくれた。私は、満面の笑みで頷いた。良太くんの顔が、みるみるうちに笑顔でいっぱいになった。


「こんなところで、会えるなんて…じゃあ、いづみちゃんも?」


『いづみちゃんも?』とは、どういう意味なのかわからなかったけれど、そんなことはどうでも良いくらい、嬉しかった。

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