風の声が聞こえる
いただきます
「次は、あちらの…見えますか?」


和賀さんが、ここよりずっと遠くにある、大きな木を指差した。何かの実がなっている。


「あれは、みかんですか?」


「この島の、あの木にしか実をつけないみかんの一種です」


和賀さんの案内で、大きな木のあるお宅に向かった。


「こんにちは、郵便です」


古い木造家屋の引き戸を開けて和賀さんが呼びかけると、中から上品なおばあさんが姿を現した。


「ご苦労様。風馬くん、こちらのお嬢さんは?」


「旅の方です。郵便配達のついでに、島を案内しているんです」


「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。さぁ、どうぞおあがりなさい」


「その前に、木を見せていただいてもよろしいでしょうか?」


遠くから見ても大きな木を、近くで見たいと思ったからだ。




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