風の声が聞こえる
家の裏手にまわって、大きな木のそばまで行った。みかんよりは小さく、きんかんよりは大きな、柑橘類が実っていた。
「あれは、生命の実って言うの」
おばあさんが、私の隣に並んで呟いた。ふくよかな身体に、着物がしっくりときていた。なんだか、舞台女優でこんな雰囲気の女性がいたな…と、古い記憶を辿ってそう思った。
良太くんと、初めてのデートでお芝居を観に行った…。その時に、主演だった女優に似ていると思った。
「これは、食べられるのですか?」
おばあさんに聞くと、和賀さんと顔を見合わせてから、呟くように言った。
「申し訳ないね、お嬢さん。この実は、この島に永住しないと食べられない」
「そうですか…」
「さぁ、次の配達に向かいましょう?」
和賀さんが、急かせるかのように私の肩を叩いた。
「はい。ありがとうございました。この島が気に入りましたので、もし、住みたくなった時には、食べに来ても良いですか?」
「住みたくなった時には…ね」
「はい」
私は、ほんのりと甘い匂いを吸いこんでいただきます…と心の中で呟いた。
「あれは、生命の実って言うの」
おばあさんが、私の隣に並んで呟いた。ふくよかな身体に、着物がしっくりときていた。なんだか、舞台女優でこんな雰囲気の女性がいたな…と、古い記憶を辿ってそう思った。
良太くんと、初めてのデートでお芝居を観に行った…。その時に、主演だった女優に似ていると思った。
「これは、食べられるのですか?」
おばあさんに聞くと、和賀さんと顔を見合わせてから、呟くように言った。
「申し訳ないね、お嬢さん。この実は、この島に永住しないと食べられない」
「そうですか…」
「さぁ、次の配達に向かいましょう?」
和賀さんが、急かせるかのように私の肩を叩いた。
「はい。ありがとうございました。この島が気に入りましたので、もし、住みたくなった時には、食べに来ても良いですか?」
「住みたくなった時には…ね」
「はい」
私は、ほんのりと甘い匂いを吸いこんでいただきます…と心の中で呟いた。