風の声が聞こえる
「今日の配達は終わりです。これから、島のはしっこの灯台に案内しますね」


「ありがとうございます」


和賀さんの自転車の後ろに乗り、風を感じながら島を散策する…。嫌だったことも忘れ、心の傷が癒されてゆく…。


小さなこの島は、島民も少ない。皆、温かくて、すぐに馴染めそうな感じがした。それに、良太くんもいるなら、心強い。


「和賀さん」


自転車の後ろから、声をかける。


「どうかしましたか?」


「私、この島に住みたいと思います」


「………」


和賀さんに聞こえなかったのか、返事はなかった。そのうち、海の香りがしてきた。海の青が、キラキラと目に眩しい。


「到着しました」


灯台は、小高い丘の上にあった。灯台に続く階段のわきに自転車を止めた。


「足元、気をつけて…」


和賀さんが、私を気遣ってくれた。その仕草にドキッとした…。一瞬、綾也の姿が頭に浮かんだ。穏やかな和賀さんと、起伏の激しい綾也は、真逆の人間なのに、な。


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