風の声が聞こえる
「高校生の時…」


良太くんは、写真をみつめたまま、私に背を向けて話を始めた。


「引っ越しを理由に、いづみちゃんと別れたことを…ずっと悔やんでいた。これで良かったんだ、と、自分に言い聞かせてきたけど、最期を感じた朝、いづみちゃんに会いたくてたまらなかった」


「最期を感じた朝?」


良太くんの言うことが、理解できなかった。最期を感じる…とは、どういうことだろうか?


「でも、大人になったいづみちゃんに会えて…良かった…」


良太くんは、くるりと振り返ると、私を引き寄せ、抱きしめた。


「今でも、いづみちゃんが好きだよ」


「じゃあ、どうして私と…別れたりしたの?私も、良太くんが好きだったのに…どうして…」


私が問いかけると、そっと体を離した。そして、私をじっとみつめて、言った。


「余命宣告を…受けていたから」


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