風の声が聞こえる
「…いづみ…」


お互い見つめあったまま、時が止まったようだった。そんな私の手に、おばあさんが生命の実を置いた。


「永住する気に、なったかい?」


永住…とは、私が死を選ぶことを意味していた。


「…いづみ…」


綾也は、ただ私の名を呼ぶだけだ。


「綾也…2人で話をしたい…」


真っ直ぐに見つめたまま呟くと、おばあさんが綾也の背中を押した。


「わかった…」

< 31 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop